大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所洲本支部 昭和26年(ワ)19号 判決

原告 川上繁一 外五名

被告 湊町里組山林管理組合

一、主  文

被告は原告川上繁一、同竹口秀雄、同前畠伊助、同垣長五郎、同川上理一に対し各金一万二千五百円、原告前田稔に対し金七千円及右原告前田稔に対する内金五千円其の他の原告に対する内金一万五百円に対しては昭和二十六年三月一日以降、各原告に対する残余の金二千円に対しては昭和二十七年三月二十日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被告は原告六名に対し被告組合員共有に係る兵庫県三原郡湊町里組所在の山林に於て費用労力原告等各自負担のもとに、燃料用松木各千貫、松葉各七十六束を引渡せ。

原告等の其の余の請求は之を棄却する。

訴訟費用は全部被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、(一) 被告は原告繁一、同秀雄、同伊助、同長五郎、同理一等に対し各金一万五百円、原告稔に対し金五千円及右各金員に対する昭和二十六年三月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。(二) 被告は原告六名に対し各松木五百貫及松葉三十八束を引渡せ。若し右物件を引渡すことが出来ないときは原告等に対し、各金三千七十円及之に対する本件訴状送達の翌日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。(三) 被告は原告六名に対し各金五千円及之に対する昭和二十七年三月二十日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。(四) 被告は原告六名に対し各松木五百貫及松葉三十八束を引渡せ。若し右物件を引渡すことが出来ないときは原告等に対し金三千七十円及之に対する昭和二十七年三月二十日以降完済に至るまで年五分の割合に依る金員を支払え、との判決並に仮執行の宣言を求め、其の請求の原因として、被告組合は兵庫県三原郡湊町に本籍を有し里組区内に居住する者並に総会が承認した者を以て組織し里組内にある山林の管理、共有、共同経営を目的とする組合であつて法人格を有しないが民事訴訟法第四十六条所定の社団として当事者能力を有するもの、原告等六名は何れも里組内に居住し被告組合の組合員であるが、被告組合は組合員共有に係る山林約百四十町歩を有し其の山林収益の分配に関し、(一) 昭和二十五年十二月二十一日の臨時総会に於て同月三十一日までに各組合員に対して松茸利益金の分配として金五千五百円及家庭用燃料として松木五百貫、松葉三十八束を各分配給付すべき旨決議して其の頃之を履行し、(二) 次で昭和二十六年二月二十二日の臨時総会に於て同月二十五日までに各組合員に対し利益金の分配として金五千円宛を分配すべき旨決議して其の頃之を履行し、(三) 次に昭和二十六年秋被告組合所有の山林上に産出した松茸の採取権を原告等六名を除くその他の組合員九十七名に夫々分配し同組合員をして各自金五千円の松茸採取に因る純益を得せしめ、(四) 更に昭和二十七年二月上旬原告等六名を除く組合員九十七名に対し家庭用燃料として各自松木五百貫、松葉三十八束を分配給付したものである。ところで原告等は、被告組合の組合員として他の組合員と同等の権利を有するものであるから被告組合は原告等六名に対しても他の組合員に給付した前記各配当金、燃料、松茸採取権を其の都度分配給付すべき義務があるに拘らず何等正当の理由なくして之を拒否し、原告繁一、同秀雄、同伊助、同長五郎、同理一の五名に対しては前記(一)乃至(四)の各給付を、原告稔に対しては前記(二)乃至(四)の各給付を履行しないから原告等は被告組合に対し右各給付の履行並に前記(三)の損害の賠償を求め若し右(一)及(四)の燃料を引渡すことが出来ないときは其の代償として時価相当の各金三千七十円の支払を求め、尚右各金銭給付の分については其の履行期日以降完済に至るまでいずれも民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める為本訴請求に及んだものであると述べ、被告の各抗弁を否認し被告組合は原告前畠伊助に対しては同人が湊町里組区内より居住を離れたとの口実のもとに昭和二十五年十二月二十一日の臨時総会に於て除名の決議を為し、之を理由に前記各分配を拒否しているものであるが右除名は法律上無効である。次に被告組合は原告等を除く一般組合員に対しては原告等主張の各分配を履行しながら前畠を除く原告等五名に対しては同原告等の私有する山林の管理権を取得しようとして同原告等が右自作山林の松茸並に下草の採取権を無償で提供したときは、之を交換条件として前記分配を履行すべき旨の不法な決議を為し其の分配を拒否しているものであるが、右は原告等の有する組合員としての権利を不法に侵奪し、各個人に帰属すべき財産権を無償で没収せんとするものであつて、憲法に違反し当然無効であると述べ、尚被告組合は表面上は湊町里組区内の山林を管理し組合員の福利増進、社会的地位の向上を図る為山林の共有、共同経営を目的とする組合である旨の看板を掲げているが、其の実質は総会の多数決主義により組合員の私有財産及其の産物を組合の支配に帰属せしめると言う共産主義的政策を立て、一部の幹部が多数の組合員を支配下におき右の如き方針を独断専行し、不当の手段勢力を利用して里組内の全山林を意の侭に支配管理せんとしている左傾的非民主的組合であつて其の手段方法が国法に違反し不法不当であるから本訴提起に及んだものであると附陳した。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告等の請求は之を棄却する旨の判決を求め、答弁として、原告等の本訴請求原因事実の内、被告が原告等主張の如き山林の共有共同経営を目的とする組合であること、原告前畠伊助が元被告組合の組合員であつたこと、同原告を除くその他の原告が現に被告組合の組合員であること、被告組合が昭和二十五年十二月二十一日の総会に於て組合員に対し松茸利益金の分配として金五千五百円宛を分配し、且つ家庭用燃料として松木五百貫程度を分配すべき旨(但し費用労力は各自負担の定めである)決議し之を実行したこと、昭和二十六年二月二十二日の総会に於て組合員に対し利益金の配当として金五千円宛を分配すべき旨決議し之を実行したこと、昭和二十六年秋組合所有山林上に産出した松茸の採取権を組合員に分配したこと、(但し費用労力は各自負担)昭和二十七年二月組合員に対し家庭用燃料として松木五百貫、松葉三十八束を夫々分配(但し費用労力は各自負担)したこと、原告等が以上の各分配を受けていないことは之を認めるが其の他の価額損害額等の点は之を争う。即ち原告等主張(一)(四)の燃料の価額(三)の松茸採取による利益は何れも労賃を控除しない額であるのみならず(三)の松茸は非常な不作で各組合員共労賃を差引くと欠損であつたと述べ、更に抗弁として原告等は右分配については次の理由により其の権利を喪失したものである。即ち原告前畠伊助については、同人は昭和二十五年春頃より里組内から居住を離れ、湊組内で八百屋を営み且つ組合に対し非協力的であつた為、被告組合は昭和二十五年十二月二十一日の総会に於て組合規約第九条第二号及第三十六条により除名の決議を為し、其の後同原告から異議の申立があつたが昭和二十六年一月二十日の組合総会に於て更に失格の決議が再確認せられたので、同原告は右除名決議により被告組合の組合員たるの資格を喪失したものである。次に其の他の原告に対する前掲(一)の昭和二十五年十二月二十一日の総会決議に係る松茸利益金の分配については、同総会に於て、里組内に自作山林一町歩以上を所有する組合員に対しては、同人等が其の自作山林の松茸採取権を組合に提供するまで又燃料の分配については里組内に自作山林を所有する者に対しては同山林の下草採取権を組合に提供するまで、いずれも其の分配を留保する旨決議せられ、尚且つ右燃料の分配については之を欲しない者は辞退し得る定めであつたところ、原告前畠を除くその他の原告は昭和二十六年一月二十日の総会に於て右燃料の分配を辞退し、前掲(二)の昭和二十六年二月二十二日の総会決議に係る板引代金の分配についても前同様自作山林の所有者に対しては松茸及下草採取権の提供あるまで分配を留保する旨、並に原告等自作山林所有者が同月末日までに右各採取権の提供をしないときは前記各利益及燃料の分配は之を打切る旨決議せられたものである。ところが原告等(但し前畠を除く)はいずれも右二月末日までに自作山林の松茸及下草採取権の提供を為さなかつたから前記(一)(二)の各分配請求権を喪失したものである。又前掲(三)(四)の分配についても原告等は同様の理由により分配請求権を有しないものであると主張し、尚原告等は被告組合が非民主的な組合であり、且つ前記の如き自作山林の松茸及下草採取権の提供を条件とすることは個人の財産権の侵害であつて憲法に反する旨主張するけれども、被告組合は組合規約により明かな如く里組区内に居住する人を中心に山林に関する共有共同経営を指向し以て村民の福利増進、社会的地位の向上を図らんとするもの、即ち山林に関し貧しき人、窮せる人を援護しようとする社会主義的、社会政策的使命を担う団体である。従つてこの組合は個人主義的な利己主義は当初から制約されているのである。然るに原告等は利己主義的な我利に立つて本訴を提起したものであるが、被告組合は前記の如き私有権の提供を強制し又は無償で没収しようとするものではない。唯組合の目的に協力しない者は組合員としての利益に均霑し得ないだけである。又脱退は自由であるから原告等は何時でも脱退すべきであると述べた。<立証省略>

三、理  由

被告組合が原告等主張の如き事業を目的とする組合であること、原告前畠伊助が当初被告組合の組合員であつたこと、其の他の原告が現に被告組合の組合員であることは当事者間に争のないところである。

ところで被告は原告前畠伊助の本訴請求に対し同原告は昭和二十五年十二月二十一日の組合総会に於て除名せられ以後組合員たるの権利を喪失したものであると抗弁しているので、先づ此の点について按ずるに、成立に争のない乙第一号証(組合規約)に依れば組合員の資格得喪に関し同規約第四条は里組区内に居住し本会の目的規約を承認したる者並に総会が組合員たることを適当と認めた者は組合員となることが出来ると規定し、其の第九条に於て総会が居住を離れているとみなした場合は組合員たるの資格を失い、同時に其の者の所有権を組合の指定する者に移転登記する義務を負い、既払込の組合加入金等の払戻し剰余金の分配を請求することが出来ない旨規定し、更に其の第三十六条は本組合員にして本会の目的並に規約に違反した行為、組合の面目を汚損した行為、組合の統制を紊す行為をした者は除名する旨規定しており、そして成立に争のない乙第二号証の三、四(総会会議録)及証人村上亀好、同中村春一、同曾根由夫等の証言によれば同原告は昭和二十五年十二月二十一日の組合総会に於て同人が湊町里組内より居住を離れ同町湊組内で八百屋を営んでおることと、組合に対し非協力であるとの理由を以て除名の決議が為され、之に対し同原告より異議の申立が為された為、更に昭和二十六年一月二十日の定期総会に於て之を審議し、同原告の除名問題は前総会の決定通り再確認する旨決議せられたことが認められる。然し同原告が当初被告組合の組合員であつたことは争のない事実であるから、同人が除名により其の権利を喪失したとの主張事実は、之を主張する被告に於て、立証すべき責任があると解せられるから被告は右除名を理由あらしめる事実上法律上の総ての要件を主張立証すべき責任ありと解すべきであるが、被告提出援用の全証拠に依るも同原告に対する右除名が正当の理由に基き、法律上適法有効に為されたことを認めるに足る証拠なきのみならず、却つて成立に争いのない乙第一号証に弁論の全趣旨を綜合すれば、被告組合は山林の管理、共有、共同経営を直接の目的とする民法上の組合と解すべきところ(被告組合が併せて組合員の福利増進社会的地位の向上を図る目的を有することは右解釈の妨げとならない)民法組合編の規定に依れば組合員の除名は正当の事由ある場合に限り他の組合員の一致を以て之を為すことを得る旨(第六八〇条)定められており、之を本件について観るに被告組合の組合員は原告前畠を除外し百一名であること被告の自認するところであるに拘らず、前顕乙第二号証の三(総会会議録)に依れば、原告前畠に対する除名決議の為された昭和二十五年十二月二十一日の総会及再確認の決議の為された翌昭和二十六年一月二十日の総会に於ける出席者は、いずれも九十五名であつたことが認められ、仮に其の出席組合員が全員一致(この点は証拠上不明)で決議したとしても、原告前畠を除く他の組合員(百名)が全員一致で右前畠の除名を議決したものとは到底認め難いところであるから、右除名は法律上の要件を欠き無効のものというべく、他に被告の右抗弁を理由あらしめる事実は被告の何等主張立証しないところである。或は被告は、民法の規定が左様な定めであつても、被告組合は組合員全員の一致した意思に基き制定した組合規約に於て、総会が居住を離れているとみなした場合は当然組合員たるの資格を喪失すべき特別の定めがあるのであるから、有効に成立した組合総会に於て其の総会が居住を離れているとみなした以上当然失格するものであると主張するのかも知れないけれども、民法上の組合は或る程度の団体性を有するにせよ、各当事者が出資を為して共同の事業を営むことを約するに依り成立する契約関係であつて、組合員の脱退は其の組合員と他の組合員との間に存する右の如き組合契約上の法律関係を将来に向つて終了せしめることを目的とする行為であるから、任意脱退にあつては脱退者より他の組合員全部又は其の代理人に対して其の告知を為し、非任意脱退の一つである除名にあつては除名者に対し他の組合員の一致、即ち他の組合員全員の同意を以て之を為すことを要し、組合業務の執行の如く組合員の過半数を以て決することを得ない事項であるから、之に反する除名決議は其の効力なきものと解すべきであり、たとえ組合規約に之と異る定めがあるとしても、右の如き組合契約の本質に反する定めは其の効力なきものと認めるを相当とするから、被告の斯る主張は固より失当である。以上の如く原告前畠に対する本件除名は其の効力を認め難く、他に同人の資格喪失を認むべき事実の主張立証のない本件に於ては、同原告は依然被告組合の組合員たる地位を保有し、組合員としての権利義務を有するものと推認すべきである。

仍て進んで原告等の本訴請求の当否について観るに、被告組合が(一)昭和二十五年十二月二十一日の総会に於て、組合員に対し松茸利益金の分配として金五千五百円宛を分配し、且つ家庭用燃料として松木五百貫程度を分配すべきことを決議し之を実行したこと、(二) 昭和二十六年二月二十二日の総会に於て組合員に対し利益金の分配として金五千円宛を分配給付すべき旨決議し之を実行したこと、(三) 昭和二十六年秋被告組合所有山林上に産出した松茸の採取権を組合員に分配したこと、(四) 昭和二十七年二月組合員に対し家庭用燃料として松木五百貫、松葉三十八束を分配したこと、然るに原告繁一同秀雄同伊助同長五郎同理一の五名が以上(一)乃至(四)の各分配を、原告稔が以上(二)乃至(四)の各分配を受けていないことは当事者間に争いのないところである。被告は原告等(但し前畠を除く)に対する右分配拒否の理由として、前記(一)の昭和二十五年十二月二十一日の総会議決に係る松茸利益金五千五百円の分配については、同総会に於て里組内に自作山林二町歩以上を所有する組合員に対しては同人等が其の自作山林の松茸採取権を組合に提供(贈与)するまで、又燃料の分配については里組内に自作山林を所有する者に対しては同山林の下草採取権を組合に提供するまで、いずれも其の分配を留保する旨の附帯決議が為され、且右燃料の分配については之を欲せざる者は辞退し得る定めであつたところ、原告前畠を除くその他の原告は昭和二十六年一月二十日の総会に於て右燃料の分配を辞退し、前記(二)の昭和二十六年二月二十二日の総会の議決に係る利益金五千円の分配についても、前同様自作山林の所有者に対しては松茸及び下草採取権の提供あるまで分配を留保する旨並に原告等自作山林の所有者が同月末日迄に右各採取権の提供をしないときは、前記各分配金及燃料の分配は之を打切る旨決議せられたのであるが、原告等(前畠を除く)はいずれも右二月末日までに自作山林の松茸及下草採取権の提供を為さなかつたから前記の各分配請求権を喪失したものであり、前記(三)(四)の松茸及燃料の分配についても原告等は同様の理由により分配請求権を有しないものであると抗弁しているから按ずるに、右(一)(二)の分配について被告主張の如き留保の附帯決議が為されたこと、原告等が右松茸並びに下草採取権の提供を為さなかつたこと、被告組合が之を理由に原告等に対する分配を打切る旨決議したことは成立に争のない乙第二号証の三、四同第三号証の一、二及び証人村上亀好同曾根由夫の証言に照して明らかである。然し被告組合は山林の管理、共有、共同経営を直接の目的とする民法上の組合と認むべきこと前認定の通りであるのみならず、前顕乙第一号証に原告本人川上繁一被告代表者垣喜代太の各本人訊問の結果並に弁論の全趣旨を綜合すれば、被告組合は昭和二十二年十二月頃右の如き事業を目的として三原郡湊町に本籍を有し里組内に居住する者が各人百円宛を出資して組織し、当初は右出資金の外組合員中より応分の借入を為し其の資金を以て同区域内の山林を買収し、更に其の山林収益を以て借入金返済の外順次山林を買収して現在は約百四十町歩を有し、右山林は組合員の共有として登記せられていることが認められ、そして組合員の持分並に損益分配の割合については特段の主張も立証も存しないものであるから、被告組合は民法共有編及び組合編の定めるところに従い各組合員が平等の割合を以て権利を有し、義務を負うものと推認すべきである。従つて被告組合は原告等六名に対しても他の組合員同様平等の取扱いを為すを要し、組合業務の執行に非ざる収益の分配等組合財産(共有財産)の処分に関し原告等が他に個有の山林を所有することを理由に他の組合員の多数決を以て一方的に原告等の有する組合員たるの右権利を制限し、或は其の権利を剥奪するが如きことは現行法の到底認容しないところである。更に被告は原告前畠を除く其の他の原告は、前記(一)の燃料の分配については辞退の申出を為し其の権利を抛棄したものであると抗弁しているから、此の点について観るに、前顕乙第二号証の四に依れば、原告繁一同秀雄同稔が昭和二十六年一月三十日の組合総会に於て右燃料の配給を辞退する旨申出たこと明かであるが、然し原告本人川上繁一の供述並に弁論の全趣旨を綜合すれば、同原告等が右の如く辞退の申出を為したのは被告組合が同原告等の有する組合員としての平等の権利を無視して、同原告等の如き自作山林を所有する者に対しては右自作山林の下草採取権(下草と称するも原告本人川上繁一の供述によれば鋸で切るような雑木を含む)を組合に提供するまで右燃料の分配を留保する旨の不法な交換条件を附した為同原告等は之を不服として、左様な条件を附けられるのであれば燃料の分配は受けない旨表明したものであつて、其の真意は寧ろ斯る不法な条件を撤回して各組合員に対し平等に分配すべきことを要求する意思であつたと解し得られるのみならず、右辞退の意思表示は前記条件が有効に原告等を拘束し得るものとすれば、斯の如き条件附の燃料の分配は辞退する旨表示(即ち一種の既定条件附意思表示)したものと解すべきところ、被告要求の右条件が平等たるべき組合員の権利を不法に制限する無効のものであること前説明の通りであるから、右辞退の意思表示は結局法律上権利抛棄の効力を有しない無効のものと解するを相当とし、其の他の原告が辞退の意思を表示したことは右乙号証に依つて之を認め難く、此の点に関する証人村上亀好同曾根由夫の供述は信用しがたく、他に被告の右主張を認容するに足る証拠は存しないから、右抗弁も亦採用することが出来ない。以上の理由により被告組合は其の組合員である原告等六名(原告前畠も組合員と認むべきこと前説明の如し)に対し他の組合員に分配給付した原告等主張の前記各給付を履行すべき義務あるものと認むべきであるから、原告前田稔を除く其の他の原告の前掲(一)の松茸利益金五千五百円及原告等六名の前掲(二)の配当金五千円の各請求は理由あること明かであるが、原告等請求に係る前掲(一)(四)の燃料の給付について観るに、前顕乙第二号証の三に弁論の全趣旨を綜合すると、右燃料は各組合員に於て費用労力各自弁のもとに入山の上各自燃料用松木五百貫宛を伐採し其の松葉(三十八束)と共に引渡しを受ける定めであつたことが認められ、被告組合は、原告等に対しても右同一条件のもとに引渡すを以て足ること勿論であるから右燃料について単純履行を求める原告等の請求は其の限度に制限せられるべきである。更に原告等は、被告に於て右各燃料を引渡すことの出来ない場合に於ける金銭賠償の請求をしているけれども、被告組合は前記の如く百四十町歩余の山林を有するものであり且つ右給付は山林現地に於て費用労力原告等自弁のもとに行わるべきこと前述の通りであるから、原告等に対する右燃料の引渡しが不能に帰するというが如きことは容易に予測しがたいところであり、他に右不能を予測し予め其の請求を為すべき必要あることの特段の事情は、原告等に於て何等主張立証しないところであるから原告等の右金銭賠償の請求は遽かに認容しがたいところである。次に原告等請求に係る前掲(二)の昭和二十六年度産松茸の採取権分配不履行に因る損害賠償の点について按ずるに同年度に於て被告所有山林より産出した松茸の採取権を原告等を除く他の組合員に夫々分配したこと、原告前畠に対しては除名を理由に、其の他の原告等に対しては、同原告等が自作山林の松茸採取権を被告組合に提供しなかつたことを理由に夫々分配しなかつたこと、原告前畠に対する除名は法律上無効と解すべきこと、その他の原告等に対する分配拒絶が法律上理由なきこと前説明の通りであるから、被告組合は右債務不履行により原告等の喪失した松茸採取による得べかりし利益を賠償すべき義務があるものというべきところ、其の損害額(収益より労賃を控除した額)について観るに前顕乙第二号証の三(昭和二十五年度松茸利益金)に証人曾根由夫同三野勝同内原吉郎の各証言、並に松茸の採取は一定の短期間内に限られ、しかも全日の就労を要しないこと等松茸採取に関する一般経験法則その他当地方に於ける一般農業労務者の労賃等諸般の事実を綜合すると、同年度に於ける被告所有山林産出の松茸は各隣保単位に分配し労力各自負担のもとに採取したものであるが、同年度は平年に比し非常な不作で採取量は少かつたが反面高値であつた為売上金は平年の五、六割に上り組合員一人当り平均収益は松茸採取に要した労賃を差引き金二千円を下らなかつたものと認めるを相当とするから、原告等は被告組合の右分配債務の不履行により少くとも各自金二千円宛の松茸採取による得べかりし利益を喪失したものというべく、右認定に反する証人曾根由夫同三野勝の供述部分は、たやすく信用しがたく他に右認定を左右するに足る証拠はない。

仍て被告組合は、原告前田稔を除く其の他の原告に対しては前掲(一)の昭和二十五年十二月二十一日の総会決議に係る利益配当金五千五百円及燃料用松木五百貫松葉三十八束を費用労力原告等負担のもとに(二)の昭和二十六年二月二十二日の総会決議に係る利益配当金五千円(三)の昭和二十六年度産松茸採取により得べかりし利益金二千円を(四)の昭和二十七年二月上旬分配決議に係る燃料用松木五百貫、松葉三十八束を費用労力原告等各自負担のもとに各給付し原告前田稔に対しては右(一)の燃料用松木及松葉並に(二)乃至(四)の各給付を履行し、且つ右(一)(二)の金銭支払の部分については各履行期日後である昭和二十六年三月一日以降(三)の賠償金について同請求拡張申立日の翌日である昭和二十七年三月二十日以降いずれも完済に至るまで民法所定年五分の割合による金員を附加して支払うべき義務あるものと認むべきであるから、原告等の本訴請求は右の限度に於て之を認容し其の余の請求は之を棄却すべきものとし、尚原告等申立に係る仮執行の宣言については其の必要なきものと認めて之を排斥し、訴訟費用の負担については同法第八十九条第九十二条を各適用の上夫々主文の通り判決する。

(裁判官 原田久太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!